Q1: 「一週間でネイティブの発音になる」「一か月で英語をマスター」という広告は、本当?
A1:
この手の広告、たくさんありますね。英語のセンスは人それぞれなので、人によっては「一か月で英語をマスター」できるのかも知れません。しかし、大部分の人には一週間でネイティブの発音も、一か月で英語をマスターも難しいと思います。もしもそれが可能であれば、中学から長い時間をかけて学んできたのがアホらしくなってしまいますし、そもそも英語を話せる人が周りにたくさんいるはずです。
この手の広告に真実があるとすれば、英語の発音はこんなもの、英語ってこんなもの、というきっかけを与えてくれる点です。ただ、発音のポイントをいくつか習って、一週間でイメージができても、それを自分の使う英語に適用するには長いトレーニングが必要になります。そのため、結局「ものにする」までには時間がかかる、と考えた方が良さそうです。
Q2: 英語をやろうと思っても、本屋さんにもインターネットにも色々な情報が溢れていて、結局何をしたらいいのかよく分かりません。
A2:
今や本屋さんに行くと、英語関係の学習書に棚がいくつも割り当てられています。そして、本の内容も様々。迷ってしまうのも、無理はありません。
こんな状況になっている理由は、多くの人が「自分が教えられてきてこうやったら結果が出た」というのをそれぞれに主張しているためです。「人は教えられたように教える」ものですので、自分がやってきたことを次の世代に継承しようとして「このやり方が一番」と主張しているにすぎません。
この状況は、見方を変えると「やり方は問題ではなく、一つのやり方に一生懸命取り組むと英語は伸びる」ということを示しています。どの本を開いても、その本が主張するやり方を「一生懸命、骨の髄まで」やることが述べられているはずです。
学習者の立場からは、自分がこれ!と思えるやり方を見つけて、それを徹底的にやる、ということになります。とはいえ、自分がこれと思えるやり方を見つけるのも、容易ではないですよね。そんな時には、学習塾の扉を叩いたり、先生を見つけたりしましょう。このFAQセッションの続きにも、学習の仕方を書きますので、参考にしてください。
Q3: 英語の本をたくさん買いましたが、結局どれにも手がつけられていません。
A3:
Q2のところに書いたように、英語学習の真髄は「自分がこれだと思える学習方法を徹底的にやる」ところにあります。やるべきことは、「多くの本を少しずつ」ではなく、「一冊の本を全部覚えるまで」です。旅行には旅行に特化した、日常会話には日常会話に特化した優秀な書籍が出ていますので、無理なく全体を学習できそうなものを選び、それにしっかり取り組むのが一番です。
また、本をたくさん買う皆さんの中には、「できるだけ楽に身につけられる方法」をサーフィンした結果、どれも少しかじって何も身についていない、、という方もおられるのではないでしょうか。「楽に身につける」方法は思い当たらないのですが、「楽しく身につける」方法はあります。ネイティブと話す、仲間と一緒に英語を話したり学習する時間を楽しむ、などなど。英会話塾や先生に相談してみましょう。「楽しく」は先生の力量によるところもありますので、周りに英会話を習っている人がいたら、先生や講座について、相談してみるのも良いでしょう。
Q4: 「これだけやれば絶対に伸びる」という究極の学習方法を教えて下さい。
A4:
Q2のところに書いたように、英語学習のアプローチは様々で、人それぞれ自分のやり方で結果を出しています。ただし、その中で、上手になっている人に共通して言えることがあります。それは、「英語を話す→言えなかったところを対策する(覚える)→次の時には言えるようにする」というループが確立できていることです。
上手になる人は、まず「話す」チャンスをできるだけ作ろうとして、オンラインや街の会話サークル、英会話学校に参加します。そして、「これが言いたい、これが言えなかった」というのを認識していて、そういった自分のためのフレーズをノートに蓄積しています。そして、常にそれを覚える努力をしています。学習テクニックは他にもありますし、文法や単語が、、というのはまた別次元の話になりますが、「究極の学習方法」は「話す→言えなかったところを覚える→次に活かす」の繰り返しです。
Q5: 海外留学したら、英語は伸びる?
A5:
海外に留学すると、英語が話せるようになる!と思いますよね。しかし、、英語圏には多くの日本人が住んでいるものの、その人たち全員が英語を話すわけではない、という事実があります。基本的な生活スキルが身につけば海外にいられますので、長くいるのに英語があまり身についていない、というケースもざらにあります。それに、短期の語学留学では「日本人の留学生と一緒にいてばかりで、結局あまり英語が身につかなかった」という声も多くきかれます。
海外で英語が身につく人は、意識的に英語を伸ばそうとして、周りの日本人と距離を置いたり、外国人の友達を作ったり、間違いを恐れずにとにかく口から英語を出す努力をしている人たちです。
一方で、海外にいると、その国の雰囲気、人づきあいの仕方、ものの考え方など、日本との違いを体験することができます。英語は人それぞれですが、そういった体験ができる、という点ひとつをとっても、海外に出るのは意味のあることだと思います。
Q6: ネイティブみたいになりたい。
A6:
いい視点ですね!しかしながら、「まるでネイティブのように話せる」レベルに行くのは、相当難しいことだと心得ておくのが良さそうです。英語のセンスは人によって大きく違いますので、なかには言われたことをすぐに覚えてしまう人や、苦労しなくてもネイティブのような発音ができる人がいます。しかし、そのような人はごく一部です。
ネイティブは、1日24時間、1週間で168時間、英語に触れています(夢も英語で見るとして(笑))。我々はどうでしょうか。1週間に1時間だけ英語のレッスンを受けて、それでおしまいの人も多いと思います。ネイティブは週に168時間、日本人は1時間。ネイティブはもともと英語ができるだけでなく、その英語の経験値が我々の168倍のスピードで日夜伸びているわけです。ネイティブに追いつくのがどういったことなのか、この計算でよく分かると思います。
Q7: 日本人の先生よりも、ネイティブの先生の方がいいですよね?
A7:
日本人の先生、ネイティブの先生、それぞれに長所、短所があります。また、生徒さんのレベルや性格によっても変わりますので、迷った場合にはこちらの英語感覚の診断をやってみて下さい。
ネイティブの先生と話すのは新鮮で、日本人にはない視点がとても面白いですよね。一方で、日本人のことをよく知っている日本人の先生は、ぴったりの学習方法を知っていたり、生徒に合わせた柔軟なクラス設計ができるケースも多くあります。私たち日本人にとって、日本語を教えるのが必ずしも簡単ではないように、ネイティブにとって母国語である英語を学習者のレベルにかみ砕いて教えるのは容易ではありません。日本人とネイティブの二人ペアで授業を受け持つのがベストですが、人的リソースやコストの都合もあり、クラス担当は一人になるケースが大部分です。
Q8: 日本人が英語が下手なのは、どうしてですか?
A8:
中学から長い間学習しても、英語がなかなか話せるようにならないのはとても残念なことです。ただ、英語が私たちにとってとても難しい言語であることは疑いがありません。言語学の世界にはLinguistic distance(言語間距離)という概念がありますが、日本語は英語からの距離が最も遠い言語の一つです。文法構造ひとつを取っても全く別物ですよね。一方、ラテン語から派生した言語は英語との関係が近く、スペイン語には英語と似た単語が多くあって、「関係詞」まである、と聞くと、「スペイン語圏の人が英語を話せるの、当たり前だよね」と思ってしまいます。
しかし、英語が下手なのを言語の違いのせいにしてばかりもいられません。韓国語は日本語と言語体系がとてもよく似ていますが、韓国人の英語は日本人よりもはるかに流暢です。サムスンに入社するためにはTOEIC900点が要求されますが、日本人にとってとても高く見えるTOEIC900点は、一流企業を目指す韓国人には当たり前の点数、ということになります。韓国の英語熱はとても高く、現地にいたことのある私の生徒によると、週に複数回英語の塾に通って力をつけるケースがほとんど、と言います。その生徒は中学生で英検準2級の実力がありますが、韓国では小学校4年生並みと言われた、と言っていました。
日本人の英語力がアジアの中でも低い水準にとどまっている事実には、日本人の国民性や文化的な側面も強く影響していると思います。ただし、言語が似ている韓国が高い水準を打ち出しているわけですから、我々にもまだまだできることがありそうです。
Q9: 文法が嫌い。どうしたらいい?
A9:
私たち日本人が日本語を話す時に文法を気にしていないのと同様、英語のネイティブスピーカーも普段、文法を認識していません。ネイティブは親から口まねで英語を学ぶわけですが、我々も同じように「ネイティブの口まねをする」ことで、英語(特に会話力)を学ぶことができます。小学生以下の生徒が歌やアクティビティーを通じて英語を身につけるのは、まさにこのやり方ですね。
一方で、文法にはとても大事な役割があります。それは、英語学習をブースト(加速)してくれることです。Q6に書きましたが、ネイティブが週に168時間英語に触れている一方、私たち日本人は1時間だけです。ネイティブが168倍の時間の中で学ぶ量を「口まね」だけでカバーするのは、ほぼ不可能です。文法というルールを学び、それに沿った英語を話すことで、口まねをしたことがない多彩な表現をアウトプットできます。圧倒的に足りていない英語に触れる時間を、文法が補ってくれるわけです。
会話で必要になる文法は、日常会話のレベルであれば、中学文法の範囲を出ることはほとんどありません。量も少なく、負荷も限られますので、取り組んでみることをお勧めします。
Q10: 英語が話せるようになりたい!でも、間違えると恥ずかしい…。どうしたらいい?
A10:
私も初心者の頃、そう思っていました。でも、海外に行って気が付きました。英語のコミュニケーションでは、「考える時間」はおろか、「恥ずかしいと思う余裕」すら与えられないと。とにかく会話が進行している瞬間に何か言わないといけないですし、話せなくても自分の意見を分かってもらわないと、生活できません。「間違えたら恥ずかしい」という気持ちは、初日に捨てることになりました(笑)。
英語が話せるようになるための最初のステップは、「間違えたら恥ずかしい」という気持ちを乗り越え、「間違えてもいいのでとにかく話そう」という気持ちに切り替えることです。理由は、①言語である英語はそもそも対象が膨大であり、それを全て間違えずに話すことはネイティブでもない限り不可能、②間違えながら学ぶ方がはるかに効率よく英語が身につけられる、の二つです。
①について:私の周りには英語の上級者がたくさんいますが、間違えずに話す人など出会ったことがありません。とても上手でも、発音が不自然だったり、てにをはを間違えたり。でも、それも無理もないことです。Q6に書いた通り、ネイティブは週に168時間英語に接する一方で、我々は1時間だけですから、そもそも追いつけるものではないのです。でも、それでも友達ができ、コミュニケーションができ、時には人生を変える経験を得ることができます。
②について:「間違えたら恥ずかしい。ちゃんと言えるようになったら話そう」と思いながら英語を話すと、文章を口から出すのに時間がかかりすぎたり、膨大な例文を覚えようとして挫折したり、文法と単語に頼りすぎて不自然な英語を話したり、ということに陥りがちです。発話量も減り、トレーニングとしての効果も低下します。さらに、守りに入って英語を話すため、活性の低いコミュニケーションしかできなくなってしまいます。どんどん話す→どんどん間違える→「次回はちゃんと言えるようにしよう」と思って対策する、の方が、よっぽど効率的なやり方です。
「間違えてもいい」「とにかく単語をつなげてコミュニケーションをしよう」という気持ちに切り替わったら、それだけで英語が話せる自分に変わったも同然です。もしもやっぱり恥ずかしさが残るのであれば、「フレーズを丸ごと覚える」ところから始めてみて下さい。相手の言ったことに対してぱっと答えるための"That's great!"とか"I think so, too."といったフレーズを、まとまった数暗記します。すると、相手とのコミュニケーションが成り立ちますし、覚えたものを丸ごと口に出すので間違いもありません。そして、どこかのタイミングで「間違えたら恥ずかしい」という山を乗り越えて、英語が話せる自分を見つけて下さい。
Q21: 英語をずっと続けているのに、伸びません。
A21:
実は多くの英語学習者が同じ気持ちを持っているかも知れませんね。もしも「続けているのに伸びない」と感じたら、次の二つのことを確認してみて下さい。①英語を伸ばすのが自分の学習の目的になっているかどうか、②覚える作業をいとわないでやっているかどうか。
英語を学ぶ目的は、人によって違います。仲間と会うのが楽しい、というのも立派な目的ですし、ネイティブの先生と会話するのが楽しい、というのもそうです。加えて英語を伸ばしたいと思ったら、毎回講座に出席して楽しかった、で終わりにせず、「伸ばすために何をしたらいいか」を考えるところにベクトルを向けてみて下さい。
「覚える作業をいとわないでやっているかどうか」、これは大事な指標になります。Q4に書いたように、英語を伸ばす黄金律は、話す→言えなかったところを「覚える」→次回はきっちり話す、の繰り返しです。この「覚える」をやっているかどうか。私の生徒さんには「家に帰ってから、授業を思い出して、大事なところに線引きをしている」「授業の内容を家に帰ってから声に出して復習している」という方が何人かおられます。英語は触れた量がものを言いますので、とても良い習慣だと思います。ところが次に「…なのに、会話力が伸びない」と言います。理由は、明らかですね。線を引いても、声に出しても、覚えたことにはなりません。復習の中に「覚える」プロセスが含まれておらず、「話す→言えなかったところを「覚える」→次回はきっちり話す」の黄金ループが成立しないため、なかなか話せるようにならないわけです。「覚える」方法は、日本語を見てぱっと英語が言える、というレベルに至るのなら、単語カードでも、100回復唱でも、何でも構いません。もしも「会話力が伸びない」と思っておられたら、覚えるプロセスが欠如していないか、確かめてみて下さい。
長くなってまい恐縮ですが、補足です。私の生徒さんに、大手英会話学校に通っていて、海外経験もなしに英語が話せるようになった方がおられました。大手英会話学校に行ってもなかなか伸びないという話は聞いていましたので、理由を聞いたら、こんなことを言っていました。「私は出された宿題を、とにかくきっちりやりました。周りの人はやっていなかった。その結果、結局伸びず、どんどんやめていきました」。目の前の課題をしっかりやる。Q2やQ3で述べた通り、たくさんのことを少しだけ、ではなく、一つのことを徹底的にきっちりと、が英語学習の鍵です。
Q22: リスニング力を伸ばしたい。
A22:
リスニングは、生まれ持ったセンスがそのまま得意不得意として出てしまうところです。リスニングが得意な人は苦も無くネイティブの英語についていくことができ、苦手だとしょっちゅう置いてきぼりになります。自分が得意・不得意のどちらに入るのかは、歌が上手か下手かで判断できます。苦労しないで音程が取れて歌えてしまう人は、聴覚が発達しているので、ほぼ間違いなく英語のリスニングもでき、話す英語の発音もきれいです。歌を歌うときに音程がなかなか取れない人は、リスニングにも苦労し、発音も意識的に取り組まないと改善しません。
私自身が「音程取れない派」ですので、とても苦労してきました。リスニング力を伸ばすには、「量をこなして音の形を認識できるようになる」のが唯一の方法です。音の形の認識とは、ネイティブの音の結合や欠落を含む発音を聞いたときに、頭のどこかにあるデータと照合し、それが何と言っているのかを瞬時に読み取る力です。大量のリスニングを行うことで培われますが、ディクテーション(書き取り)やシャドーイング(音源をそっくりに口から出して発声するトレーニング)といった高負荷なトレーニングをすることで、そのプロセスを時間的に圧縮して行うことができます。具体的なやり方を知りたい方は、この画面の下のリンクからご連絡ください。
Q23: 頭打ちになってきた英語を何とかしたい。
A23:
ある一定レベルまで自分の英語が伸びると、そこからさらに伸ばすのが難しくなってきます。とはいえ、そのレベルに達した人は、自分の英語に足りないものも見えていますので、自分が持っている羅針盤を頼りに地道に訓練を続けて行くのが、結局のところ必要なことのようです。
一方、英語をさらに伸ばす上で手掛かりになるのが、「英語を学ぶ」から「英語で何かを行う」という形への転換です。英語で本を読む。英語でYouTubeを見る。多くの中上級者が「英語で何かをする」というところに手を伸ばしていないのも事実ですし、実際にネイティブが使っている英語に触れて、そこから知識や英語力を手に入れる、という部分が大きく不足しているのも事実です。
この時に気をつけるべきことは、自分の好きなもの、英語をずっと読んで・聞いていてもあきないものに手を出す、ということです。「英語で何かをする」のが上手く回って日常生活の一部になると、好きなことをしているうちに勝手に英語が伸びる、という状況に至ります。すると、英語学習がさらに楽しくなります。Q25の内容もご参照ください。
Q24: 辞書や文法書から得た知識で英語を話していたら、ネイティブにそういう英語は使わない、と言われました。
A24:
英語力が一定のレベルに達した皆さんは、原点に戻って、「ネイティブの口まね」の重要性を再認識する必要があります。言い方を変えると、「文法・単語を駆使して文を組み立て、言いたいことを言う」という方向が成熟したら、「ネイティブがこんなシーンでこんな言い方をしていた」という方向からも、英語をとらえる必要がでてくる、ということです。文法・単語を駆使した作文は、実は「ネイティブが果たして本当にそう言うのか」という視点からの検証が薄くなっています。自分の英語を"refine"し、クオリティーの高いものにするために、ぜひ「ネイティブがこんなシーンでこんな言い方をしていた」という方向からの英語力を高めるようにしてください。具体的にするべきことは、Q23やQ25で述べたことに他なりません。
Q25: ニュースがいいと言われるけど、ニュースは好きになれません。
A25:
その気持ち、よく分かります。私自身も長いこと「ニュースを聞け」と言われて、でも好きになれずに、手が伸びませんでした。
ニュースの代わりにできること、たくさんあります。自分の好きな分野に関するYouTubeの動画を見る。好きな外国人の俳優をTwitterでフォローする。英語のTikTokをたくさん見る。インターネットで英語のリソースが何でも手に入りますから、その中から自分が好きなもの、長く見たり聞いたりしても飽きないものを選んで取り組んでください。好きな分野のものに繰り返し触れることで、今までお目にかかったことのない表現や単語がたくさん身に付き、それを自分が話すときに使えるようになります。もしも「こんな英語を話せるようになりたい」と思える英語を話す人物に出会えたら、とても幸運です。その人の英語を繰り返し聞くことで、自分の英語力がどんどん伸びます。
一方で、多くの先人が「ニュースを聞け」と言うのにも理由があります。NHKのラジオ講座にも、必ずニュースを扱った講座が中上級者向けに用意されていますね。時事ネタなので万人受けしやすいこと、英語のクオリティーが高いことも大きな理由ですが、私が個人的に主張したいのは、ニュースが「表現の宝庫」である点です。少しシリアスな日常会話やディスカッションで必要になる「この言い回しが欲しかった」「この言い方が欲しいニュアンスをぴったり表してくれる」という表現が、ニュースには次々と出てきます。英語ニュースを聞くには、アメリカならアメリカの政治の仕組みや社会情勢に関する知識も必要になりますので、最初は取り組みにくいかも知れません。しかし、辛抱強く続けるとやがて面白みが分かり、英語の視点からも大きな恩恵をもたらしてくれます。
Q26: 発音が上手になりたい。
A26:
以前、「発音が上手な人の英語は内容がない」と言う人に会ったことがありますが、ある意味的を射た話かも知れません。発音と英語の内容は、トレードオフの関係になることがよくあります。発音に集中すると、内容がおろそかになる。内容に集中すると、発音がおろそかになる。最も、そうでない人もたくさんいますが…。そんなことなので、発音が気になっていても、なかなか切り込めない中級者、上級者の方もよく見かけます。
発音は、音に対するセンスに直結しています。そして、リスニングもそうですので、発音とリスニングの良し悪しには直接的な相関関係があります。10人に2人くらい「耳の良い人(=音に対するセンスがいい人)」がいますが、彼らは、発音が上手で、しかもリスニングにあまり苦労しません。でも、多くの人はそうはいきませんね。
発音を改善するには、私が知る限り、地道な作業を繰り返すしかなさそうです。自分が出す英語の音ひとつひとつに注意を払って、直していきます。最初は単語のアクセント。そして、日本語にはないFやV、THの音をやります。さらにLとR。それができたら、OやAなどの母音の使い分け。。。
…こんな話をすると、やる前からやる気を失ってしまう人がたくさんいそうですので、前向きな話をひとつします。何度も口に出して発音をなおす訓練を進めると、発音が自動化され、英語を話す時に勝手に口の形ができます。すると、内容に集中でき、内容を損なわずに英語を話せるようになります。さらに、音に対するセンスが育ってきます。すなわち、訓練を続けることで、知らない単語でもきれいに発音できるようになり、さらにリスニング力も伸びます。
発音改善、リスニング改善に、シャドーイングというとても効果的なトレーニングがあります。長くなるので、また項目を改めて書きます。
Q27: 多聴多読を「やらされて」います。これは何になるのでしょうか。
A27:
「多聴」や「多読」は、とにかく量をこなすことで、英語を身に染み込ませるためのトレーニングです。やるときには、とても大事な前提が一つあります。それは、「完璧主義を捨てて、辞書を使わない」こと。
やってみて分かったのですが、とても多くの人がこれに物凄い抵抗感を持っています。量を優先するので、知らない表現や単語は想像で補ってどんどん先に進みます。しかし、どうもそれが気持ち悪い。100%理解できないと落ち着かない。皆さん、受験勉強に毒されていますね(笑)。
英語はコミュニケーションのツールです。相手の言っていることが分からなかったり、自分が言いたいことが言えなかったり、そもそも100%の前提がありません。多聴多読は、そのベースで行うトレーニングです。100%を捨ててください。多読なら、最初の10ページは我慢比べです。よく分からなくても、何とか先に進みます。10ページを超えるとどういうわけか物語が分かるようになり、20ページを超えると、面白くて次が読みたくなります。そうしたらしめたものです。
そうまでして、多聴多読をする目的は?それは、赤ちゃんが言語に触れているうちに徐々に学ぶのと同じやり方が、英語習得にも効果があるからです。ハリー・ポッターを数巻読むと、同じような表現が繰り返し出てきて、その表現は勝手に覚えてしまいます。しかも、その言葉が本質的にどんな意味で、どんな文脈で使われるのかも、完璧に身に付きます。こういった情報は辞書からは読み取れません。辞書で学ぶより、よっぽど優れた実用知識として身に付く、ということです。
そしてもう一つ。がんばる・覚える型の受験勉強よりも、ずっと面白くてお得なのが、多聴多読です。何しろ、「この本、面白い」と読んでいるうちに、勝手に英語の知識が身に付くわけですから。そして、多聴多読を続けると、学校の勉強も英検の試験もひどく簡単なものに感じられるようになります。
多聴多読には、自分の好きなもの、読んだり聴いたりしていて飽きないものを、題材に持ってきてください。それも成功の鍵の一つです。